春の数え方・人間はどこまで動物か

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『春の数え方』
『人間はどこまで動物か』
日高敏隆
新潮文庫

学者で、文章の面白い方というのは、たくさんおられます。
解剖学者の養老孟司さんの本も面白いですし、免疫学者の多田富雄さんの本も面白い。
今回の、動物行動学者である日高敏隆さんもまた、非常に面白い本を書かれています。

「蝶はどのように春という季節を知って羽化するのか。」「羽化した蛾は何のために光を求めて飛ぶのか。」「カマキリがその年の降雪量を予測して卵を産む位置を変えるというのは本当か。」「洞窟昆虫はどのような進化を遂げてきたのか。」などといった生物に関することばかりだけではなく、「温暖化とは何か。」「外来生物について。」「河川の管理の在り方。」といった環境問題から、「大学とは何か。」「この大学で良かったのか戸惑う学生。」という話、果ては「スリッパについて。」といった話まで、あらゆることへの思索が書かれています。

例えば、「羽化した蛾はなんのために光を求めて飛ぶのか。」という話。
ミドリムシや、植物プランクトンならば、光を求めて浮遊する理由というのは、すぐに思いつきます。
「光合成のため」ですよね。では、蛾は何故光を求めるのでしょうか。光合成など、無論するはずもありません。
虫が光に寄ってくるという習性を良く知ってはいますが、しっかりと考えてみると、不思議ではないですか。
僕は不思議でした(高校生物でやった気がするけどそんなこと忘れちゃったもんね←)。
日高さんの本には、「何故」がたくさん詰まっています。

日高さんは、時々大胆な考えを書かれるのですが、書き方はとても謙虚です。なんというか、科学者らしい書き方(当たり前ですが)。わからないところは、はっきりとわからないと書く。むしろわからないと書いてあることのほうが多いです。でも、それが面白い。なんでなんだろうと考えさせてくれます。
書き方もとても優しく、かつわかりやすい。理系っぽい本ですが、文系の人にもおすすめしたい本です。きっと、身の回りにいる生き物たちへの視線が変わるはずです。文系の人こそ、その驚きは大きいのかもしれません(文系の僕が言うのですから、きっとそうでしょう 笑)。

僕は、今まで実験やサークル活動で解剖、観察、スケッチということはそれなりにやってきたつもりでした。でも、その時、その生物の背景や行動にまで考えを巡らせていたでしょうか。確かに、エビの足のつき方とか、関節の付き方とか、イカの吸盤の付き方とか、そういったことは何故そうなっているかまで考えながらやっていたつもりですが、その生き物自体を観ていたかどうか、怪しいところです。その生き物がどのような生活をしているのか、どのようにその足を動かし、どのような行動をしていたのか、それは何故か…。
日高さんの本は、「何故」と考えることの大切さ、面白さを再認識させてくれるものでした。
「考え方」がとても新鮮でした。
また、既に亡くなっている方の考え方を新鮮に感じたことが、少し悔しくもありました。

日高さんは、滋賀県立大学の学長を務めたことがある方で、著書の中にも滋賀のことがたくさん出てきます。また、東京出身でもあるので、東京についてもたくさん書かれています。自分は滋賀育ちで、現在東京の大学に通っているため、より親近感がわきました。
by kobaso | 2011-04-02 22:02 | 読書小話
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