シダ植物やらユキノシタやら

シダ植物や、ユキノシタが、好きだ。
あの緑色とちょっと妖艶な感じが、好きなんだと思う。シダ植物は静かな深い緑色をして、少し妖しくつやつやしているし、ユキノシタはユキノシタでくすんだ緑色をして、これまた妖しげな産毛みたいなのが生えている。
山に行ってシダ植物を見つけると、しばらくしげしげと眺める。手でちょっと撫でてみたりする。葉の裏に手をまわしてみると、指に少し違和感を感じる。気になって葉の裏をめくると、葉の裏には虫の群れのようなブツブツがびっしりとついている。ひえぇっと思って、慌てて葉を表に反す。しばらくして、またそうっと裏を向ける。やっぱり、ひえぇっとなる。しばらく、くり返す。シダの裏がどうなっているのか知ってからも、同じことを繰り返す。
ユキノシタも、その産毛を触っているうちに葉の裏が気になって、ペロッと裏返す。葉の裏は、まるでひどく殴られた後の肌みたいに、赤く染まっている。ひえぇっとなる。やっぱりすぐに表に反して、しばらくしてからちらっと裏を向ける。それを何度か、繰り返す。
その「ひえぇっ」の繰り返しが楽しいので、好きなんだとも思う。


年末なので、地元に帰る。地元に帰って、地元の大切な人に会う。
ご飯を食べたり、お茶を飲んだりしながら、近況を話し合ったり、何でもない話をしたりする。
僕があまり話さない上に、ただでさえ鈍い頭の回転が、ここのところさらに鈍くなっているので、わいわいと話すわけではないけれど、ぼんやりと、楽しい。
しばらく話して、別れる。そうやってひとりになると、胸のどこかがシクシクしてきて、ひえぇっとなる。
単純にちょっと寂しくなって、ひえぇっとなるのもあれば、なんかあんまし言葉に出せなかったなぁ、なんだか少し申し訳ないなぁ、ひえぇっていうのもある。あぁ、そうだ、あの時ああ返せばよかったのに。お勧めしたい映画とか思い返してみればたくさんあったのに、言えなかった。ひえぇっというのもある。
一通りひえぇっとなってから、じんわり、楽しかったなぁと感じる。またちょっとひえぇっとなって、またじんわり楽しい気分になる。気の合う人と会ったあとは、大抵、いつもこういう感じを繰り返す。

思い返してみれば、今年はこういう感覚を抱くことが、少なかったのかなぁと思う。
毎日薄暗い地下鉄に乗って、白色蛍光灯で照らされた無菌の部屋の中で黙々と作業をして、話らしい話もせずに過ごしてばかりだったような、気がする。
シダもユキノシタも、葉っぱの裏側しか見ていなければ、ただの気持ち悪い葉っぱでしかない。葉っぱの表側をじっくり見て、たまにぺろっと裏返してひえぇっとなっては表に反して、という風に生きていかないとなあって、ぼんやりと思った。

なんだかうだうだと書きましたが、大切な人に会うのは楽しいことだね。ってことなのでした。
そして東京に戻ったら、久しぶりに鍋会を開きたいなと、思いました。

良いお年を。
by kobaso | 2012-12-31 00:07 | 退屈小話
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