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ぬけがら

つらいついらいとむやみやたらに口にするのは、あまりよろしくないと思っている。
口にしたところで何かが良くなるわけでもないし、誰かが何かをしてくれるわけでもない。
むしろ人の反感をかったりもする。それどころか自分につらいつらいと言い聞かせてしまうことになる時もある。あとから考えればそれほどつらくなかったりもする。つらいつらいと口にして良いことなどあまりない。

ただそれでも、意味もなくつらいつらいと言いたくなることがある。
誰かに聞いてほしいわけでもなく、わかってほしいわけでもなく、心配されたいわけでもなく、単につらいと思っている想いを発散させたくて、つらいと呟きたくなることがある。ただ無視はされたくない。面倒な話だなぁと思う。
「つらいですねぇ」と言って、「そうですねぇ」とぼんやりと返してくれる人がどこか近くにいないものかなと思う。

つらいつらいと自己主張する人とは、あまり話したくないものなんだろうなと思う。自分のことで十分つらいのに、人のつらいことまで抱え込むのは面倒なのかもしれない。
そんな話をする人よりは、なにかくだらないけれど楽しい話をする人の方がいい。
変な色かたちをした生き物だとか、意味不明なことが書かれている看板だとか、おじさんみたいな猫だとか、井戸端会議のおばさんたちの会話だとか、高校生のよくわからない話だとか、そういう話を聞いていた方が楽しい。
だからそういう話を人にしようと思って、そういうメールを人に送ろうと思って、時間を見つけては近所をぶらぶらする。けれど、何も見つからない。
なので仕方なく、公園の木についた何の変哲もない蝉のぬけがらの写真を撮る。
撮った写真を見て、ぼんやりとする。
雄の蝉が外でけたたましく鳴いている。幼虫の時は何の声も発しなかったのに、成虫になった途端なにを言っているのかわからない言葉でわめきたてる。雌の蝉はそれを木陰で聞くともなく聞いている。


つらいつらいと何度もかけたので満足しました。
最近観た映画の主人公が、「さびしさだとか、つらい状況に酔いたいだけだろう。君も僕も!」と怒鳴っていました。そういうことなんだろうなと思います。
by kobaso | 2012-07-29 16:11 | 退屈小話