国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)主催の
生物多様性条約COP10 1年前シンポジウムに参加してきました。 今回のシンポジウムの趣旨は、 来年名古屋で 生物多様性条約第10回締結会議(CBD-COP10)および第5回カルタヘナ議定書会議(MOP5) が開催されることを踏まえ、「2010年目標」をどう考えるか、「ポスト2010年目標」をどうしていくかということでした。 簡潔に言うと、今までの取り組みの反省を踏まえた上で、今後「生物多様性」の実現に向け、どのように取り組んでいくかということです。 プログラム等はこちらをご参照ください。 また、以下に記すことは、知識的にも経験的にも未熟な私が勝手に考えたことですので、 その辺のこと、よくよくご承知願います。 シンポジウムの基調講演やセッションにおいて、Jeffry A. McNeely氏や中静透氏の述べておられたことに、 2010年目標「2010年までに、世界的な生物多様性の損失スピードを著しく抑える」 には、科学的な基準値、またその基準値測定の数値、手法がない。との指摘がありました。 「生物多様性」という概念自体が受け入れられにくいものであり、科学的根拠の欠落がさらにその曖昧さを助長させている。 しかしながら、私はそれ以上に、生物多様性に関する取り組みに疑問を持ちました。 それは、「ビジネスや政治が優先して、科学的視点が軽視されているのではないか」ということです。 セッション項目の中に「科学的基盤に基づいた目標と評価指標が何故必要であるか」というものが含まれていること自体がおかしいのではないかと思うのです。 この条約が生物多様性、環境に関することであるならば、「何故科学が必要か」など確認するまでもなく、「科学ありき」になるはずではないでしょうか。 生物多様性は重要であり、それを保全するために企業や行政が行動する。この行動の価値を見出すために、科学が利用されている気がしてならないのです。 何故、科学的指標も意義も確定していないのに、行動を起こすのか。 産業界の方が示した生物多様性の指標としての例には、 「生物多様性に配慮し企業が活動した件数」が挙げられていましたが、 その活動が、果たして生物の保全に役立つものであるかどうか確認せずに、「件数」を指標にしてしまうのは、少し杜撰な感じがしてしまいます。 確かに、生物が次々と絶滅していく現状は、無視できるものではありません。 しかしながら、どこまで人間が絶滅していく動物に関与して良いのかというのは、難しい問題である気がします。 そもそも、「あるべき自然の姿」とは何でしょうか。 たとえば、日本ですでに絶滅したトキを再び日本に定着させることは、 「あるべき自然の姿」に戻すということになるのでしょうか。 今後温暖化が進むにつれ、恐らくは生物は移動し、滅び、あるいは誕生して、それなりの変化をしていくように思われます。 そんな中、元あった自然の姿、人間の言う「あるべき自然の姿」に戻すことが、本当に『自然』なことなのでしょうか。 以前にも言ったことがあるかもしれませんが、 今、人間が「地球にやさしい」と言いながら、自然を保護する、自然を元あった姿に回復させるという行為は、 今まで我々が自然を利用しすぎてきたことと同じように、『不自然』なことなのではないでしょうか。 人間が自然をどうこうしようということに変わりがないように思えてしまうのです。 もっと言うなれば、生物多様性の保全に向けての日本の中長期目標として、 「生物多様性の損失を止め、現状以上に豊かなものへ」 というものがありました。前半部分はわかるとしても、後半部分「現状以上に豊かなものへ」とは、一体どういうことなのでしょうか。 現状以上に豊かにするということは、現状ある以上に、その地域に生息する生物を増やすということなのでしょうか。恐らくそんなことはないとは思いますが、もしそうだとしたら、それこそ環境破壊であり、『不自然』なことのように思えます。 批判ばかり書いてきましたが、何も「生物多様性を保全する必要がない」と言っているわけではありません。 ただ、もう少し科学的根拠をはっきりさせた上で、企業が、行政が生物多様性について考えていくべきなのではないかなと思ったのです。 お金が絡むと科学的事実など軽視されるのは仕方のないことなのかもしれませんが…。 またまた下手な文章の長文ごめんなさい。
by kobaso
| 2009-10-10 23:25
| 生物小話
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