沙漠では、ことばもかたちを見失うのね――。長く生活の場であった《船》をおりた私は、キビ色の沙地の白い家で暮すことになった。パイ生地のようになった109冊の航海日誌(カルトローレ)を解読することが仕事だ。そこに現れたのは、琥珀色の肌の少年、蜜色の髪に淡緑の目の青年、移民局の役人、そして――。現と幻のあわいに拡がる物語。 (新潮社ホームページより) 長野まゆみさんの本は、たぶん、好き嫌いがはっきりと分かれるんじゃないかな。 なんというか、メルヘンチックなんです。文章が。どファンタジーというか(笑 僕は結構好きです。ただ、BLに走ってしまうこともあって、ちょっとびくびくしながら読むんですが、 この本は面白かった。 今まで砂漠を舞台にした話を観たり読んだりしていなかったからか、 情景をイメージするのに結構苦労して、終始ぼんやりとした情景しか頭に思い描けなかったのですが、 逆にそれが良かったのかもしれない。 ストーリーも、決してははああああなるほどねそいううことだったのか!!みたいな、 ミステリーを読むときのような感じはなく、やはりぼんやりしてます。 でも、それがすごく、読んでて気持ちがいいというか、砂漠にいるような感じにも似ているし、夢の中にいる感じにも似ているのかな、心地良いんです。 筆者も、そのぼんやりを狙っているような節があって、 主人公のタフィや、コリドー、エリジン、ワタの存在、関係、過去、現在、未来が、 どうとでも解釈できる。読者の頭で、どこまでも話を膨らますことができる。 本の世界から離れると、なんというか、夢から覚めて、大体のことは覚えているんだけれど、核心のところを忘れてしまっているような感覚に陥ります。またすぐに眠って夢が観たくなる感じ。 本を読み終えると、そんな夢を観たけどまた寝ている余裕はなくて、電車の中とかで夢の続きをぼーっと考えている時みたいな、そんな気持ちになる。 あと、長野まゆみさんの本のなかには、たくさんの食べ物や飲み物が出てくるんだけれど、どれもすごく独特で、綺麗。 例えば、 「ニンニクのすりおろしと卵黄とレモンを練り合わせる。粒胡椒をすこし。ワタはひよこ豆をピュレにして、白胡麻とあえる。コリドーはワックスペーパーで風船をこしらえ、なかにシイラの切り身をならべた。香草とレモンとバターをのせて蒸し焼きにする。私は米でつくった薄い皮に半熟玉子とチーズをくるみ、油で揚げた。ワタはべつの鍋で小さな赤い茄子やソラ豆や子芋などを素あげにする。」 「香辛料のはいったコーヒーは欠かせない。それにジャスミンの花の水晶づけを甘味としておとす。砂糖はじきにとけ、小さな花が浮かぶ。」 なんか、目と鼻に優しい感じですよね(笑
by kobaso
| 2011-02-11 23:34
| 読書小話
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