春に思うこと 3

昨日今日と、気持ちの良い天気が続いている。
窓を開けるとちょっと冷たい風が吹き込んでくる。天気とは対照的な部屋の散らかり具合だったので、
部屋を片付けることにする。床の上の書類をとりあえず山積みにして、掃除機をかける。
風呂を洗う。トイレを洗う。台所を洗う。山積みにした書類をあるべきところに戻す。本棚の中を整える。
戸棚を整理する。空のビンを2つ見つける。何か作りたくなる。
ジャムか、しょうがシロップか、漬物でも漬けようか。
とりあえず冷蔵庫を開ける。キュウリがある。ニンジンがある。セロリがある。
ピクルスを作ることにする。

鍋にお酢と砂糖と塩を入れて煮る。
お酢の匂いがふんわりと漂う。ちらし寿司が食べたくなる。そういえば、数日前はお雛様だったっけ。
火を止める。携帯が鳴る。友達からの、本の紹介を求めるメールだった。春らしい恋愛ものが読みたいという。
春らしい恋愛ものってなんだよそんなのあんまし知らないよと思いつつ、本棚を眺める。
角田光代の「さがしもの」、川上弘美の「センセイの鞄」と「神様」をお勧めする。
恋愛ものとはいえないかもしれないなと思いつつ、まあいいや面白かったしとメールを返す。
お酢が少し冷めている。
ニンジンの皮をむく。千切りにする。ちょっと嫌なことを思い出して、乱暴に切る。いけないいけないと正気を取り戻して、昨日の幸せなオムライスを思い出しながら、トントンと切る。形がちょっといびつになる。
セロリのすじをとる。明日から行く雪山のことを考える。せっかく春が来たのにまた冬を追いかけるのかと思って、少し憂鬱になる。でも行けばはしゃぐんだろうな。行く前に少し面倒な気分になるのは、いつもの悪い癖だな。セロリのすじは、気持ちよく、するするととれる。
キュウリのへたをとる。免許の手続きをしないとなと思う。
キュウリの皮を少し剥く。親に連絡しないとな。
キュウリを三等分に切る。きっとぶつくさ言われるんだろうなぁ。
祖父母の家にも行こう、えいやっとビンにニンジンを入れる。
変わりやすい天気に、少し参っているかもなぁ、全然行けてなくて悪いなと思いながら、ぽろぽろとセロリを入れる。
来年度の時間割も決めないとな、化学に行くか生物に行くかまだ迷うなぁと考えながら、別のビンにぽんぽんとキュウリをつめる。
来年度も楽しくなるといいなと思って、ふたつのビンに粒胡椒をぽつぽつ入れる。
ちょっと余裕も欲しいなと思って、ローリエを一枚ずつ入れる。
このピクルスが良い具合に漬かった頃に、友達をよぼう。とくとくとビンにお酢を注ぐ。
友達をよんで、いろんな話をしてもらおう。いろんな話が聞きたいな、自分はぽつぽつ話そうかな。ビンのふたをきゅっとしめる。
おいしくなれよ、ピクルス。ぽんと冷蔵庫に入れて、ぽんと冷蔵庫の扉をしめる。
きゅううううううと冷蔵庫が言う。

窓から春めいた気持ちのいい風が吹き込んでくる。
どこまでものんびりとした春の初め。

b0180288_17334627.jpg

by kobaso | 2011-03-09 16:11 | 退屈小話
<< 地震 春に思うこと 2 >>