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渡りの足跡

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渡りの足跡
梨木香歩
新潮社

『「自然の生態系を取り戻せ」といったような考えもしっくり来ない。こういう事態に追いやった責任の大部分が人間にあるにしても、その人間もまたnatureの一部であるのだし、ならばその欲深さや浅はかさもまたnatureなのだから、この状況こそが、この時代この場所の「生態系」に他ならない。だが、何とか環境の人為的な破壊を食い止めたいと試行錯誤する人々がその種の中に出ることもまた、自ら回復しようとする自然の底力の一つなのだろう。』


最近、いろんなことが少し落ち着いて、ほっと息を抜いたら風邪をひいてしまいました。こころに少し余裕の隙間を開けたら、隙間風邪が入ってきたみたいです。
こんな適当なくだらないことを言えるくらいには元気です。こんにちは。kobasoです。お元気ですか。

久しぶりに本の記事更新です。
何度か書いてきましたが、梨木さんは僕が一番敬愛している作家さんの一人です。
「渡りの足跡」も、本が出た当時すぐに購入していたのですが、内容が鳥類に関するもので、その時はいまいちイメージしながら本を読み進めることができずに本棚に入れっぱなしにしていました。
最近、鳥に詳しい友人のおかげで少しは鳥に興味がわくようになり、一般的な種類ならばわかるようになってきたので、本棚から取り出して読んでみました。

渡りをする鳥の行動・生態を通して、人間の姿というか、生き方みたいなものが透かして書かれています。
かといって、鳥に感情移入して人間の姿を描写しているわけではなく(鳥に好意を持っては書かれていますが)、トリという生き物の姿と、ヒトという生き物の姿を、客観的に捉えて重ね合わせて書かれています。なんだか説明が難しいね。
著者の主張がエッセイとして書かれている本って、どうしても「私はこう思う。これが正しい。」みたいな感じで厚かましい感じになってしまうことが多いような気がするのですが、梨木さんの場合はそうではなく「私はこうじゃないかと思う。」だけに留まって、しかも反対の意見の立場を汲み取り尊重しようとういう意思が感じられる文章なので、読んでいてなんだかとても感心してしまいます。
自分の意見という大きな柱を持ちつつも、その柱には枝がたくさんついていて、異質なものにも少しその枝が触れている感じ。
唯我独尊になることもなく、優柔不断になることもない。
梨木さんの考えの持ち方は、とても素敵な姿勢で、ほれぼれとします。
歳をとったら、こういう姿勢が身に付いていればいいな。と思います。

鳥の姿をイメージしにくいので、図鑑を併用して読むと、自分も探鳥している気分になって楽しいです。渡り鳥に対する見方が少し変わるかも。
あとね、この花がまるごと落ちた桜の謎も解決して僕は満足です(笑
by kobaso | 2011-11-29 18:12 | 読書小話
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