さて、あらためましてこんばんは。kobasoです。
さきほどの文章を読んで、どう思われましたか。なかなかに興味深いですよね。本当にそんな学校があるのかと思ってしまうし、とても魅力的に感じる一方で、なんとなくの疑問も感じてしまいます。しばらくは、その疑問が何なのかということが判然としませんでした。 しばらくぼんやりと考えていたのですが、友人がまた、面白いことをツイートしていました。「大学の授業で高橋源一郎の言うアメリカの学校を取りあげたことがある。そのとき皆で話し合う時間があって、興味深いことにその授業に出ていた20人弱はほとんど『この学校へ子どもを通わせたいか』という問いにNOだった」と言うんです。面白いですよね。 何故ほとんどの人が「NO」と答えたのか。僕は、最初この学校に自分ならば行きたいと感じました。ただ、子どもを通わせたいかとなると、どうなんだろうと思ってしまいします。おそらく通わせたくないんじゃないかな。ほとんどの大学生と同じように。それは、全く自分の経験したことのない、それも、その学校の学習方法は自分の経験した学習方法とは正反対の学習方法に感じられて、子どもが果たしてそれで上手くいくのかということへの不安が大きいからだと思います。 また、別の友人はこうも言いました。 「たぶん、その学校の教育方法を認めてしまうと、今まで自分が辿ってきた道を否定してしまうことになる。もしくはそれに近い形になってしまう。その道を辿ってきて、今の自分があるわけで、自分の道が間違っているわけではないということを認めたい気持ちが、多分にあるんじゃないか。」 「それまでに辿ってきた自分の道、現在の自分に、自惚れるほどではないにしろある程度の満足はしている。子どもが自分と同じような道をたどれば、ある程度には成長するだろうという思い込みもあるのかもしれない。」 なるほど、なかなかに納得のいく言葉でした。自分にとって既知のものと未知のものがあるならば、既知のものの方は予想が立てやすく、また子どもができた際にもアドバイスや補助がしやすいものです。また、自分の現在を肯定しようとする気持ちが少なからず働いているとしたら、今まで辿ってきた自分の道を、子どもにも選択させようとすることは当然のことであるかもしれません。 大学生ともなれば、まだまだ若造に違いはありませんが、多少は自分のそれまで辿ってきた道を考えて、それなりの自己評価を下せる段階には至っていると思います。それでは、義務教育の真っただ中にある小中学生や、受験勉強に追われる高校生ならば、この「世界一素敵な学校」に対してどのような意見を持つのか気になりませんか。僕は気になりました。なので、何人かに聞いてみました。 質問としては、「アメリカにある学校がある。その学校は幼稚園児から19歳までの子が通う学校なんだけれど、普通の学校とは勉強の方法が違って、自分が勉強したいと思った時に、自分の勉強したいことを教えてもらえる。例えば、○○さんが九九について勉強したいと思ったら、先生に九九を教えてくださいと言って九九を習う。海の生き物が知りたいなら、海の生き物について教えてくださいと言って教えてもらう。やりたいと思ったことだけを勉強すればいい。嫌いなものは、勉強したくなければ勉強しなくてもかまわない。ただ遊んでいればいい。ただ、ルールがあって5分の遅刻を2回以上してしまうとその授業は永遠に受けられなくなってしまう。学力は、その高校を出た時にはふつうの高校をでた人に比べても高い学力を持ってるんだって。もし、それと同じ学校が日本にあるとしたら、その学校に行きたいと思う?それとも普通の学校に行きたいと思う?また、自分に子どもができたらその学校に行かせたいと思う?」という、だいぶ省略したものですが簡潔にまとめて聞きました。 以下がその結果です。 小2 男子「その学校には行きたくない。遅刻のルールがめんどくさい。子どもができたらっていうのはちょっとよくわかんない。」 小6 女子「ほんとに自分の好きなことだけをしていいなら、行きたい。でも、自分の子どもは行かせたくない。それでちゃんと勉強できるのか不安だから。」 中1 男子「行きたい。楽しそう。自分の子どもは行かせたくない。不安だから。」 中3 女子「迷うな。幼稚園から小3くらいまでの間なら楽しそうだけど。小学校高学年くらいからは行きたくない。自分の好きなことだけやって、基礎学力が付くかどうか不安。子どもができたら子どもに任せるかな。たぶん行かせないけど。」 中3 女子「基礎学力が付くかどうか、自分から学ぼうとできるかどうかが不安だから、行かない。行きたくない。子どものことは、子どもができてからじゃないとわからない。でもたぶん、行かせない。」 中3 男子「行きたくないですね。ある程度、全体的な知識がないとわからないこともあるじゃないですか。数学わからないと理科もわからないし。そういうこと、自分からは勉強しにくそうで。子どもも行かせたくないですね。同じ理由で。」 高1 女子「難しいな。でも、行きたい。人とは変わったことがしたい。子どもも行かせたい。人とは変わったことをさせたい。」 高1 男子「絶対行かないっすよ。ってか俺行っちゃダメっすよ。先生ならわかるっしょ?俺行ったら勉強とか絶対しないすもん。そんくらいわかってますよー。子どもは、その子どもの性格にもよりますけど、たぶん俺と似てるんで行かせないですね。」 高3 女子「行きたくないですね。遅刻しない自信がないです。子どもも行かせたくないです。自分の子どもが、勉強のこと、知ろうとするかがまず不安です。」 データとしては不十分ですが、面白いことに、行きたいと答えたのは9人中3人でした。また、自分の子どもも行かせたいという人は、9人中1人でした。 塾に来ている子に聞いたので、このような結果になったのかもしれませんが、行きたくないと答えた子の多くの理由が「基礎学力が付くかどうか不安」「勉強しようとするかどうかわからない」というものでした。この解答の背景には、「基礎的な学習は、自発的には起こりえないものだ。」「勉強はさせられてこそするものだ。」「苦しみを乗り越えながらやっていくものが勉強だ。」という考えがあるのかもしれません。また、中3の男の子が答えている「関連する教科を自分では発見しにくい」というのは、納得のいく理由です。数学ができなければ理科はできないですし、化学も物理も生物も、いたるところでリンクしあっています。文学もまた、その当時の時代背景と相互に関係しながら成立しています。そういったものを1から発見し、自力で学んでいくのは難しいことですよね。まぁただ、これは指導する先生次第でなんとでもなる問題なのかもしれませんが。この問題を挙げるのも、今の日本の教育が分野ごとに独立してカリキュラム化されているからこそのことなのかな。 子どもについては、未だ存在しない人間のことなので、なかなか考えづらく、また信頼もしにくいようでした。実際、自分もそう思います。まだ存在しない人間のことを考えるのはとてもむずかしい。 また、これも友人の言葉なのですが、「世界一素敵な学校」に比べ、現代の日本の教育もそれほどまでに批判される必要は無いのかもしれません。小学校から高校までは確かに、自分の意思とは無関係に様々な教科の学習をさせられます。しかしそれは、選択肢の蓄積とも言えるものかもしれません。小学校から高校までの間に、科学の世界を知り、言語の世界を知り、社会のことを知り、芸術のことを知る。その選択肢の中から、自分の興味のあるものを選んで、希望し、学力があれば自分の学びたい分野の大学に行くことができる。決して、日本の教育は自分の好奇心の向く学習ができないというわけでもないのかもしれません。 ここまで考えてふと思ったのですが、「世界一素敵な学校」を否定しようとする気持ちは、「他を認めることが、自己の否定につながる」からではなく、「他の否定を行うことで、自己を肯定できる」から起こるのかもしれません。生徒の言っていることや、自分の考えていることをまとめていると、なんとなく、そんな気がしてきました。『「世界一素敵な学校」の勉強の方法はおかしい。今自分が受けている教育の方が、たくさんの知識がつく。こうやって辛い思いをしながら勉強をしている自分は頑張っている。』と、無意識に自分に言い聞かせているのではないかとも感じられました。その感情が悪いものだとは思えませんし、受験勉強まっただ中の生徒が、今自分の受けている教育方法を否定しようとする方向に傾くと、色々なものが崩れていってしまう。これは当然の自己肯定の感情だと思います。 ちょっと休憩。
by kobaso
| 2012-01-20 02:29
| 退屈小話
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