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麦藁帽子/堀辰雄
少女/ウンセット 尾崎義訳
コロンバ/デレッダ 大久保昭男訳
百年文庫 ポプラ社

「青」をテーマに3つの短編が収められた短編集。
「麦藁帽子」では海の青。「少女」ではアネモネの青。「コロンバ」では夜の青・悲しみの青。
表紙と帯のデザイン、あとは自分の好きな色がタイトルになっているというところに魅かれて、古本屋さんで手に取りました。
堀辰雄は最近、ジブリの「風立ちぬ」で有名になった(もとから有名だったからこの表現は正しくないかもしれない)ので、特に説明はいらないと思います。
ウンセットはノルウェーの作家で、1928年にはノーベル文学賞を受賞している作家さん。
デレッダはイタリアの作家で、こちらも1927年にノーベル文学賞を受賞している作家さん。

「青」に収められている3篇は、どれも心理描写が繊細で、僕の好きな作品たちでした。

「少女」では、2人の少女の友人関係が描かれています。人間関係のようなものって、国も時代も関係がないのだと改めて思いました。昔は、友人と自分の力関係のようなものを気にしたり、友人に劣等感や優越感を感じたりして、その度に自己嫌悪のようなものに陥っていたなぁ。ここ数年はそんなことが全くと言っていいほどないのだけれど、これは僕が成長したからなのか、それとも感性が麻痺してしまっただけなのか。

「コロンバ」は、この3篇の中でも僕が特に好きだと思った作品です。
失恋した直後で、貧しく、猜疑心と皮肉にとらわれてしまっているアントニオと、田舎者だけれど気立てのよいコロンバのお話。
誰だったか、「自分が欲しているものが手に入らず、その状態が長く続くと、人は自分が何を欲していたのかすらわからなくなってしまう。」みたいなことを言っていたけれど、この短編を読んで、僕自身が求めていたものを思い出しました。
なんてことはない、単純で簡単なことでした。

人との関係性、人と関係を持つ時に抱く心情のようなものに焦点をあてているから、きっと人によって色々な解釈ができて、色々な感慨にふけることもできて、おもしろいと思います。
本屋さんではなかなか見つけられないかもしれないけれど、おすすめの本です。
by kobaso | 2014-05-25 01:00 | 読書小話
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