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minimal

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minimal/谷川俊太郎/思潮社

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お魚を産んだわ
と女が言う
すぐ海へ放したと

ふふふと含み笑いして
私は街の中
ヒトがヒトにうんざりしている

これから何をしようか
死んだ友だちに
会いに行こうか

何も分かっていない
何も知らない私は
ひとまず文庫本を開くが

いい天気だということしか
心に
浮かばない

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東京に来てよかったと思うことの一つは、東京のどの街にも、生活圏内に個人経営の面白い古本屋さんがあるということです。
大きな書店だとそのあまりの蔵書数にどの本を手にとって良いのかわからなくなってしまうけれど、こじんまりとした古本屋さんだと、情報量が限られているので、おもしろそうな本が探しやすいんです。
あと、詩集や歌集のような、「新品で買うには少し気が引けるけれど、中古の値段なら欲しい」ような本を手に入れるのに古本屋さんは重宝します(詩人の方、歌人の方、ごめんなさい)。
この本も、阿佐ヶ谷のコンコ堂という古本屋さんで見つけました。ちなみに昨日の「青」も。

僕が読んだことのある詩は、ランボオと谷川俊太郎、あとは小説や随筆にちらっと出てきた詩くらいです。なので、あまり詩についてどうこう論じることはできないのだけれど、詩って余白が大事なんだろうなと思うんです。
詩集をめくると、真っ白な紙にぽつりと数行の言葉が並んでいます。
その紙の真っ白さが、僕は好きです。そしてその真っ白な紙にぽつりぽつりと並んだ言葉が好きです。
しんとしたところで、誰かがぽつりぽつりと、もしくはすらすらと、もしくは力を込めて話すような、そんな情景があって。
なので、僕が最初にあげた詩(題名「ふふふ」)も、余白を感じられないこの場に載せてしまったことで、たぶんその魅力はかなり失われてしまっただろうと思います。色々な意味で谷川俊太郎さんごめんなさい。

谷川俊太郎さんの詩だと、この詩集では「ふふふ」が、「夜のミッキーマウス」では「百三歳になったアトム」が好きです。何故かはあまり言葉にできません。


色々な職業の人がサバイバルゲームをしたら、まず真っ先に詩人が消えるだろうとはよく言われますが、詩人は誰かにかくまわれて、結構生き残るのではないかと、僕は思っています。
言葉が無ければ人は死んでしまうから。
by kobaso | 2014-05-25 21:48 | 読書小話
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