週末

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週末/ベルハルト・シュリンク 松永美穂訳/新潮社クレスト・ブックス

「いつも自由でいたかった。あらゆる束縛を振り払い、自由の光のなかを、自由がもたらす恐ろしさと共に生きてきた。いま自分が飛ぶならば、自分の行いは全て正しかったということになるだろう。」

僕は中学生のころ、読書感想文が大の苦手でした。おもしろい本に出会っても、そのおもしろさを伝えるだけの言葉が、僕にはなかったので。当時の読書感想文は、本のあらすじと意味のない言葉が原稿用紙を埋めているだけの、落書きでした。
今もその状況はあまり変わっていないけれど、本を読んで、自分が伝えたいことを言葉にするということについては、ある程度できるようになったつもりです。それだけの言葉も言い方も知っているつもり。
けれど、たまにどう言っていいのかよくわからない本と出合うことがあります。
おもしろいんだけれど、言葉が浮かばない。
誰かに「読んでみて」と伝えたいんだけれど、どこがどうおもしろいかうまく言葉にできない。
「週末」は、そういう本です。

釈放された赤軍のテロリストと、その友人たちが過ごす週末を題材にしたお話なんだけれど、
赤軍の話なんて、映画で知っているくらいで、僕たちの世代にはあまりピンとこない。
「作中に作者を投影した人物を登場させて、他の登場人物を観察させる」という話の仕組みだって、今までいろんな作家が試みていることで、別にベルハルト・シュリンク特有のレトリックなわけでもない。
時々、無理やりな感じのストーリー展開が繰り広げられたりしてしまう。

それでも、本の中に吸い込まれそうなくらいおもしろい。
「暴力を抑止できるのは暴力だという考えを完全に否定することの困難さ」
「思い出の扱い方」
「自分で自分を縛りつけてしまうことの哀れさと共感」
「思想の伝播」
「個人と社会のいがみあい」
みたいな、色んなテーマが238ページの短い中に収まっているから、あまりの感想の多さに感想が書けなくなっているのかな。できることなら、1章ごとの感想を書きたいくらい。そんな気力はないけれど。

僕はおもしろいと思ったけれど、もしかすると苦手な人も多いかもしれない。
登場人物が多くて、最初の方はだらーっとしてしまうけれど、140ページ目くらいから面白くなってくるので、しばらく辛抱して読んでみてください。
by kobaso | 2014-07-03 00:16 | 読書小話
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