ワンダフルライフ

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『人は亡くなると、天国の入口でこういわれます。「あなたの人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」天国に行くまでの7日間で、死者たちは人生最良の思い出を選択するように迫られ、それを職員が再現して映画に撮影し、最終日には上映会が開かれるのである。そこで死者たちは改めて自分の一生を振り返る。懐かしさにひたり、後悔したり、思い悩んだ末に彼らが選んだ思い出は……』(小説ワンダフルライフ 裏表紙より)

邦画なら是枝監督の作品が好きなのですが、なかでもこの作品は自分の一番好きな映画のひとつです。
先日「朗らかな映画」について話をしていた時にこの映画の話が出て、また観たくなりました。
僕がこのお話を知ったのは小説が最初で、中学生のころに「小説ワンダフルライフ」を読みました。その時は是枝裕和が映画監督だってことすら知らなかった。小説も面白いです。
是枝監督の初期作品には暗くて重いお話が多いのだけれど、この映画は明るい(と思う)。

このお話の設定では、人は死んだらひとつだけ思い出をあの世に持っていくことができて、その思い出をずっと抱きながら眠る。

作中では、登場人物があの世に持っていきたい思い出を色々と語るのだけれど、ほとんどが役者さん自身が選んだ本当の思い出を語ります。だから、その思い出を語る役者さんの顔がとても活き活きとしています。
是枝監督は子どもの可愛らしさを撮る天才だと思うけれど、この作品の場合はおばあちゃんが可愛い。
特に「赤い靴」の思い出を選んだおばあちゃんが本当に可愛い。
ただ、主人公二人の演技がちょっとくさい(ARATAはこの映画が初出演)ところも確かにあるので、それがこの映画の評価が少し低い原因なのかな。

あの世で、ひとつの思い出を抱きながら眠るということについて、
伊勢谷(伊勢谷友介本人)みたいに、「そんなのは嫌」だと感じる人もいれば、山本さんのように「それじゃあ、そこは本当に天国なんですね」と感じる人もいる。僕はどちらかというと、山本さんの感じ方に近いな。そんなに何かを背負いこんでるわけではないけれど。
死後の世界を描いたお話というのはたくさんあるけれど、死んでから「全くの無」になるのは想像ができないし、生まれ変わりたいとも思わないし、ましてやこの世を魂だけが彷徨うなんて僕は嫌です。
ひとつの思い出の中でしか過ごせないなんて恐ろしいと感じる人がいるのもわかるけれど、僕は救われるような気持ちになるな。信じるなら、輪廻転生とかよりもこのお話を信じたい。

不謹慎ながら、今もし死んでしまったとして、自分はどんな思い出を持っていくのか考えてみるんだけれど、

高校時代、自転車に乗りながら田園から太陽が昇る風景を眺めている思い出とか、
冬の朝、誰もいない教室でストーブにあたりながら本を読んでいる思い出とか、
昼頃、実家のデッキで、飼っている柴犬をなでながらウトウトしているときの思い出とか、
夜の誰もいない水族館のイワシ大水槽の前で、寝転びながらぼーっとしているときの思い出とか、

幸せだけれどなんだか少し寂しくなる思い出しか浮かばないので、もう少し生きて、幸せで寂しくもならない思い出をつくらなければなと思ったり。
あと、年老いてから、自分の妻(いるのか?)や友人に、「思い出を一つ持っていくとしたら何を持っていくか」尋ねるのが夢だったりします。

この作品を観ると、思い出がとても美しいものに思えるのだけれど、思い出にとらわれ過ぎると生きることが難しくなったりもするね。この映画を観て救われる気持ちになる一方で、「思い出の中では生きられない」って感じる自分もいます。
by kobaso | 2014-07-06 00:25 | 映画小話
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