いちばんここに似合う人

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いちばんここに似合う人 / ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳/ 新潮クレスト・ブックス

『おめでとう、あなたテストをパスしたのよ。そうぜんぶテストだったんだ、みんなふりをしていただけ、人生は本当はもっとずっといいものなんだよ。その人は安堵のあまり声をたてて笑い、そしてメッセージをもう一度再生して、その人が知っているすべての人たちが、その人を抱きしめて輪の中に迎え入れるために彼女を待っている場所の住所を聞き直す。うれしくて目がくらみそうだ、でもこれは夢じゃない、本当のことなのだ。』

みんなちょっと、おかしい。
短編集なのだけれど、登場人物がみんなすこし奇妙。

なにか状況を変えたいとき、「ここ」ではないところに行きたいなと思った時、いつもと少し違うことをしてみたりする。
この短編集に出てくる人たちは、みんな何か孤独のようなものを感じていて、でもそれから逃れたくて、奇妙な行動をとる。老人を集めてボールに水を張って水泳の練習をしてみたり、見世物小屋で働いてみたりする。けれど、孤独みたいなものから逃れようとする行動はたいてい報われないもので、ふとした時に現実に立ち戻り、孤独みたいなものに直面して、途方に暮れてしまう。
この本のお話には、ハッピーエンドがあまりなくて。けれど、なんでだろう。絶望的な感じもあまりしない。
それはきっと、お話の終わりには、登場人物が「ここ」から半歩出た状態になっているからなんだと思う。
「ここ」が似合ってた人が、ちょっとだけ「ここ」には似合わなくなっている。現実は何も変わらないし、報われたわけでもないんだけれど、変わりそうな兆しがみえる。
でもそれは、また「ここ」に戻ってきそうな気配も漂わせていて、やっぱりハッピーではない。

僕は「その人 This person」というお話が好きでした。
その人はこの人だったから。

みんなハッピーになればいいのにな、なんて、すごく安っぽくて陳腐なことを思ったりする。
もうすぐ秋ですね。
by kobaso | 2014-09-02 23:29 | 読書小話
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