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昨日のように遠い日

ご無沙汰しております。
しばらく書けていませんでした。12月初めに体調を崩し、1月2月は修論に追われ、3月初めは地獄の訓練と言われる某管理者養成学校へ研修のために入校していたため、ここを更新する余裕がなかったのですが、そろそろぼちぼち再開していこうと思います。

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昨日のように遠い日 少女少年小説選/ 柴田元幸 編/ 文藝春秋
「ぼくはもう二度と - ほんとうに二度と - 去年のぼくほど「いい子」にはなれないことを感じとったのだ。」

雑誌MONKEYを監修している、翻訳家の柴田元幸さんが、少年・少女を主題とした海外小説を集めてまとめた短編集。少年少女のお話ばかりなのだけれど、児童文学というよりも、どちらかというとこの本は、その時代を失ってしまった人が読む本だと思う。
つらいことも苦しいことも、楽しいことも、その時感じていることはすべて思い出になってからしか消化できない。
それらを感じ、体験しているその場その時では、必死にそれらの出来事・感情を咀嚼している段階でしかない。
この本は、咀嚼している最中の人のための本というより、消化してしまった人が、その味を思い出すかのように読むための本だと、僕は感じました。

僕は、長期的な記憶力があまり良いほうではないので、昔の思い出みたいなものはすぐ風化して、普段の生活の中では忘れてしまっています。
なので、「あのときああだったよね」と人に言われても、そうだったかなとぼんやりしてしまって、なんだか申し訳なくなることもしばしばです。
ただ、たまにデジャビュのように昔のことを思い出すことがあって。それは、夢で昔の知人に会ったときとか、本のなかに昔の出来事をフラッシュバックさせるようなフレーズを見つけたときです。
この本の中には、それがたくさんあった。
「すこしずつ変わっていってしまう自分のこわさ」だとか、「自分のなかで曲解して記憶してしまったもの」とか、「尊敬する人への感情や葛藤」だとか。
一遍の小説を読むたびに、ひとつひとつの自分の過去をたどるようで、とても新鮮な感覚を味わうことのできる本でした。過去は遠い。けれど、それは昨日のように近くもある。けれど昨日は手の届くことのない遠い場所。

この本を読んだ人と、どの話が一番好きだったかみたいな話がしたいな。
ぼくは「灯台」が一番好きでした。

もうすぐ春です。
by kobaso | 2015-03-14 23:00 | 読書小話
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