音 / 幸田文「台所のおと」 川口松太郎「深川の鈴」 高浜虚子「斑鳩物語」 / ポプラ社百年文庫 『ああ、いい雨だ、さわやかな音だね。油もいい音させてた。あれは、あき、おまえの音だ。女はそれぞれ音をもっているけれど、いいか、角だつな。さわやかでおとなしいのがおまえの音だ。その音であきの台所は、先ず出来たというもんだ。お、そうだ。五月には忘れず幟をたてな、秀がいるからな、秀が。ああ、いい雨だ』 東京では、桜散しの雨がしとしとと降っています。今週は春雨の週のようです。 新しく勤め始めた会社の通勤路には、長い桜並木があって、先週、それはそれは見事な桜吹雪を見ることができました。 「散るという 飛翔のかたち 花びらは ふと微笑んで 枝を離れる」 という俵万智さんの短歌が好きで、いつもこの時期になるとその歌を思い出すのだけれど、先週の桜吹雪はそれでいうと、微笑むどころか爆笑してました。桜。桜が爆笑してるっていうと風情が全くなくなるね。ニホンゴムズカシイネ。 僕の勤める会社は今の時期が最盛期なので、朝は7時半くらいに会社につくように家をでます。 そうすると、住宅街にある会社までの道のりには、朝のすっきりとした静けさがあって、それがとても好きです。 僕は静けさが好きです。でも、その静けさは、無音ってわけじゃない。 鳥の鳴き声とか、水の音とか、木の葉が揺れる音とか、雨の降る音とか、そっとした音のある静けさ。 この本には、その静けさがあります。 ポプラ社の百年文庫は、どれも面白くて、大好きです。 本屋さんで見かけたら、ちょっと手に取ってみてください。
by kobaso
| 2015-04-05 22:16
| 読書小話
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